「読みやすい文章」作成のコツ| 表記統一に役立つ『記者ハンドブック 新聞用字用語集』
こんにちは、Umekoです。
出版関係で30年働いた編集者です。
60歳でブログをスタート、複数の「副業」にもチャレンジしています。
みなさんは、ブログを書くとき、言葉の表記に迷うことはありませんか?
「例えば」なのか「たとえば」なのか?
「行う」なのか「おこなう」なのか?
「一人」なのか「ひとり」なのか?
表記が統一されていないと、人は「読みづらい!」と感じるものです。
読みやすい記事作成のコツは、「表記の統一」だよ!
ネット副業やブログなどで活動するためには、文章スキルは必須です。
今回は紙メディアで30年働いてきた私が、記事を読みやすくする基本、「表記統一の方法」について紹介します。
「表記のゆれ」は読みづらい原因となる
なんとなく落ち着かないテキストには、「表記のゆれ」がある場合があります。
「表記のゆれ」とは、同じ言葉なのに、違う表記が混在していることを言います。
「行う」と「おこなう」、「できごと」と「出来事」や、
「Amazon」と「アマゾン」、「Google」と「グーグル」など、
表記の混在があると、人は「読みづらい」と感じてしまうのです。
例えば、記事の前半で「星さん」と表記しているのに、後半でいきなり「星先生」と変わっていたらどうでしょう?
読者は「さっきは『星さん』だったのに、なんで『星先生』になったんだろう? 何か意図があるのか?」などと考えて、記事を行ったり来たりして確認することもあるでしょう。
そうなると、せっかくの集中が切れてしまいますよね。
意図的な表現は別として、表記が統一していれば読者に無用の混乱を与えません。
数字の表記も紛らわしいことが多いですよね。
皆さんも、記述に迷うことがありませんか?
「1つ」なのか「ひとつ」なのか?
「2つ」なのか「ふたつ」なのか?
3つ、4つ、5つの場合はどう表記したらいいのか?
などです。
「その場で判断すればいいや」と思っていると、迷って記事作成の手が止まってしまうこともあると思います。
どのような方針で表記するかを前もって決めておけば、迷う必要がありません。
ムダな時間も使わなくてすみますから、効率的です。
読みやすい記事を作成するには、「表記のゆれ」をなくすことが基本となります。
「表記のゆれ」をなくすためには、その漢字を「ひら(開)く」のか、「と(閉)じる」のかを決めておくことも大切なポイントです。
漢字をひらがなにすることを、「ひら(開)く」と言います。
逆に、ひらがなを漢字にすることを「と(閉)じる」と言います。
「こども」は、「子ども」と表記される場合が多いですが、「子供」という表記もありますね。
さて、開くのか、閉じるのか。
一つひとつの判断が、記事全体の空気感をつくっていきます。
漢字含有率が高い原稿のことを「黒い」と呼ぶ。
『Editor’s Handbook 編集者・ライターのための 必修基礎知識』(編集の学校/文章の学校[監修]、雷鳴社)
黒い原稿は読者に好まれない傾向にある。
「挨拶」ではなく「あいさつ」、「頂く」ではなく「いただく」と書く方が、読者からの好感度が高まる可能性が高いのである。
ただし、「杜撰」を必ず「ずさん」にしなければならないというわけではない。
漢字のままの方が理解しやすく、漢字とひらがなのバランスが悪くなければそのままでもいい。
要は同じ文章の中で「杜撰」と「ずさん」が混在しなければいいのだ。
表記が統一されているテキストは、読みやすいだけではありません。
″きちんと感のある記事”は、ブログと運営者への信頼にもつながるはずです。
もしも、「なんだか落ち着かない」という違和感のあるときは、テキストのどこかに不統一な表記や誤字が潜んでいる場合があります。確認してみましょう。
表記統一に役立つ『記者ハンドブックー新聞用字用語集』
表記の統一ルールを自分オリジナルにできれば言うことなしです。
しかし、そこまでするのは難しいですよね。
そこで、市販の「用字用語集」を活用して、表記統一に活用するのがおすすめです。
私は30年近く出版社に勤めていました。その前は業界新聞社で働いていましたが、手放せないのが『記者ハンドブックー新聞用字用語集 第14版』(共同通信社)です。
表記に迷うことがあれば、必ずこの本で確認しています。
kindle版もあります。
「記者ハンドブック」は、メディア関係者を中心に高い支持を集めてきました。
漢字とひらがなはどちらを使うのか?
送り仮名はどうつけるのか?
同音異義語の使い分けはどうするのか?
このような言葉の表記方法はもちろんのこと、記事の書き方の基本、ジャンルごとの「記事のフォーム」などに至るまで掲載されています。
まさに、記者必携の書だといえます。
プロ仕様の記事作成ルールブックですから、Webライター、企業の企画・広報担当者など、文章を書く幅広いジャンルの人たちが質の高い文章を作成するのに役立つと思います。
編集の原則が、「まえがき」に記されています。
どのような時代になっても記事は①分かりやすくやさしい文章で書く②できるだけ統一した基準を守る―という原則に変わりはありません。
『記者ハンドブック 第14版 新聞用字用語集』(共同通信社)
この2つの教えに、「読みやすい記事作成の原則」が凝縮されています。
『記者ハンドブック』の使い方はこうです。
表記に迷う言葉があれば、「用字用語」を「読み」から引くことができます。
例えば、「こたえ」を『記者ハンドブック』で引いてみます。
こたえ 答え
[注] 問い、答えを表や記号、一問一答形式にする場合は「問」「答」と送り仮名を省いてよい。
『記者ハンドブック 第14版 新聞用字用語集』
記事作成における注意も示されているので、大変に助けになります。
『記者ハンドブック 新聞用字用語集』は、2022年3月に約6年ぶりに大改訂がおこなわれ、第14版が発売となっています。
パラパラめくっていると、このような表記もありました。
やばい やばい
[注] 使用をさけるべき隠語。元々は「危ない」の意味だったが、「驚いた」「すごい」「楽しい」「おいしい」「まずい」など肯定的にも否定的にも使われる。引用でも使用には慎重さが必要。
『記者ハンドブック 第14版 新聞用字用語集』
ここに収録されているということは、「やばい」は報道に使ってよい言葉なのかどうなのかが検討されたということですよね。そのうえでの指針が示されているわけですから、大変に参考になります。
収録されているのは、用字用語だけではありません。
「記事のフォーム」には新聞記事の書き方の原則がコンパクトに示されています。
迷いやすい「数字の書き方」も具体的に示されているので、記事作成に役立つと思います。
記事中の数字は、数量や順序などを示す場合は原則として洋数字、慣用句などは漢数字を用いる。見出しも本文と同様とする。
『記者ハンドブック 第14版 新聞用字用語集』
このように方針を示したうえで、洋数字を使うもの、漢数字を使うものも挙げられており、注意点などが具体的に解説されています。
「資料編」には、全国の市名・町名、紛らわしい地名・社名、紛らわしい法令関連用語なども掲載されているので、大変に便利です。
「紛らわしい会社名」という項目もあります。
キヤノンの「ヤ」は小文字の「ャ」ではなく大文字の「ヤ」であるとか、いすゞ自動車は「ず」ではなく「ゞ」であるとか、間違いやすい細やかな注意も示されています。
新聞紙面で会社名を誤っては大変ですから、「慎重な確認が基本」ということがよくわかりますね。
「用字用語集」を1冊は持っていて損はない
共同通信社の『記者ハンドブックー新聞用字用語集』のほかにも、「用字用語集」が発行されています。
『毎日新聞用語集2020年版』(毎日新聞社著、kindle版)
Amazon Kindleのみの発売となっている電子版用字用語集で、unlimited会員なら無料読み放題です。
日本新聞協会からも、用字用語集『新聞用語集2022年版』(新聞用語懇談会編、日本新聞協会)が出版されています。
各新聞社、放送局などは、日本新聞協会の「新聞用語懇談会」での議論や、日本新聞協会の「新聞用語集」をもとに、自社ルールをつくります。自社媒体の読者層やテーマにマッチするようにカスタマイズするわけですね。
各社発行の「用字用語集」の大元は、日本新聞協会発行の「新聞用語集」ということになりますので、「漢字表記の基準」や「かな遣い」、「送り仮名のつけ方」、「差別語・不快語」、「外来語の書き方」などの基準は、ほぼ同一となっているようです。
新聞社や通信社各社の表記統一ルールは報道のためのものですから、ブログやWebライティングにはあてはまらない場合もあるでしょう。
出版社では用字用語の基準を設けている社もあり、用語集が出版されています。
『岩波 現代用字辞典 第四版』(岩波書店辞典編集部、岩波書店)
調べてみたら、公文書にかかわる用字用語集もいろいろと出版されていました。
ちなみに、「用字用語集」のATOK変換辞書も発売されています。
ATOKを使っているならインストールできます。
私はまだ活用していないので、実体験をご紹介できなくて申し訳ないのですが、便利そうなので情報だけをご案内させていただきますね。
ひとつは『共同通信社 記者ハンドブック辞書 第14版 for ATOK』(JUSTSYSTEMS)です。
JUSTSYSTEMの公式サイト(https://www.justsystems.com/jp/products/dic_kyodo/)より購入可能です。
もうひとつは『NHK 漢字表記辞書2015 for ATOK DL版』(JUSTSYSTEMS)です。
ジャンルによっては、「もっと、やわらかい口調のほうがいい」という場合もありますよね。
それぞれに特色がありますので、自分にあった「用字用語集」を探してみるとよいと思います。
まとめ
今回は【「読みやすい文章」作成のコツ 表記統一に役立つ『記者ハンドブック 新聞用字用語集』】について紹介しました。
表現は個人の自由なので、「用字用語集」に書いてあるからといって、絶対に従わなければならないということではありません。
迷ったときに確認したうえで、自分の感覚に合う表記に決めていけばよいのではないかと思います。
重要ポイントは、「表記を統一する」ということです。
表記統一のルールを決めておけば、記事作成やリライトがラクになると思いますよ。
ブログ運営をしながら、Webライターとして活動されている方もいらっしゃるでしょう。
表記が統一がされた原稿は、編集者をホッと一安心させることと思います。
なぜなら、納品された原稿の表記が不統一だと、編集者は自分でチェックして修正し、表記の統一作業をしなければならないからです。
たいていの編集者は仕事をいくつも抱えていて忙しいですから、その時間と労力を負担に感じるのではないでしょうか。
もし、表記統一の判断に迷うことがあれば、自分なりに統一しておき、原稿納品時に「申し送り」として担当者に伝えるといいでしょう。
重要度によっては、原稿作成過程で確認してもよいように思います。編集者の負担を軽くする仕事のやり方は、きっと次の発注につながるでしょう。
言葉は日々進化しています。
言葉は奥が深くて難しいですが、精進してまいりたく思います。
どうぞよろしくお願いします。
今回は記事を読みやすくする基本、「表記統一の方法」についてお伝えしました。
ちなみに、「文章力がアップのコツ【送り仮名のつけ方】確かめる方法」についても解説しています。こちらもぜひ、参考にしてみてください。
【資料・参考文献】
『記者ハンドブック 第14版 新聞用字用語集』 [ 一般社団法人共同通信社 ]
『Editor’s Handobook 編集者・ライターのための 必修基礎知識』(編集の学校/文章の学校[監修]、雷鳴社)
『標準 編集必携 第2版』(日本エディターズスクール)
『原稿編集ルールブック』(日本エディターズスクール)
文化庁 第20期国語審議会 第3回総会 次第・議事要録
https://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/sisaku/joho/joho/kakuki/20/sokai003/03.html
「全文検索できる唯一の“表記ハンドブック”を発売」(毎日ことば、毎日新聞 校閲センター)
https://mainichi-kotoba.jp/info-20200926
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