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売上高? 売り上げ高? 表記はどっち?|【経済関係複合語】送り仮名の付け方を解説

umeko
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こんにちは、Umekoです。

出版関係で30年働いた編集者で、得意ジャンルはビジネス・自己啓発書です。
60歳でブログをスタート、複数の「副業」にもチャレンジしています。

ネット副業やブログなどで活動するためには、文章スキルは必須です。

「A社の売上高が過去最高!」

「A社の売り上げ高が過去最高!」

どっちにすればいいのかな?!

このように、表記に迷うことはありませんか?

読みやすい記事は、送り仮名も統一されています。
しかし、送り仮名は使い方に幅があるので、不統一になりやすいもののひとつです。
なかでも、単語が複数合わさっている複合語の送り仮名はやっかいです。

そこで今回は、複合語の中でも頻繁に使う「経済関係複合語」の送り仮名の付け方について、紙メディアで30年働いてきた私が解説します。

この記事でわかること

漢字2字以上を用いて書き表す「複合語」の送り仮名の付け方

プロ記者の「経済関係複合語」送り仮名の付け方を活用する方法

「経済関係の複合語の送り仮名の付け方」を把握することは、読みやすい記事作成の助けとなるでしょう。
みなさんの「文章力アップ」につなげていただけたら幸いです。

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「複合語」の送り仮名の付け方とは?

「複合語」というのは、あまり聞き慣れない言葉かもしれません。
次のような語のことです。

漢字の訓と訓、音と訓などを複合させ、漢字2字以上を用いて書き表す語

『日本語表記ルールブック』(日本エディタースクール)

複合語の送り仮名の付け方の基準となるのは、内閣告示の「送り仮名の付け方」https://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/sisaku/joho/joho/kijun/naikaku/okurikana/index.html)です。

文化庁のサイトで公開されていますから、誰でも見ることができます。

この「送り仮名の付け方」には、本則例外許容が示されています。
本則とは、基本的な法則のことです。

送り仮名の付け方については「文章力アップのコツ|【送り仮名】の付け方 確かめる方法を解説」の記事を書いています。内閣告示の「送り仮名の付け方」についても紹介していますので、こちらも参考にしてみてください。

あわせて読みたい
【読みやすい記事作成のコツ】送り仮名の付け方を確かめる方法とは?[徹底解説]
【読みやすい記事作成のコツ】送り仮名の付け方を確かめる方法とは?[徹底解説]

複合語の「送り仮名の付け方」 ー 基本的な法則

それではさっそく、複合語の送り仮名について、「送り仮名の付け方 複合の語 通則6」本則(基本的な法則)を見てみましょう。

「送り仮名の付け方 複合の語 通則6」

本則

複合の語(通則7を適用する語を除く。)の送り仮名は、その複合の語を書き表す漢字の、それぞれの音訓を用いた単独の語の送り仮名の付け方による。

〔例〕 
(1) 活用のある語
 流 申 打わせる 向かいわせる 長引 若返 裏切 旅立 聞しい 薄暗 草深 心細 待しい 軽々しい 若々しい 女々しい 気軽 望

(2)活用のない語
石橋 竹馬 山津波 後姿 斜左 花便 独言 卸商 水煙 目印 田植 封切 物知 落書 雨上がり 墓参 日当たり 夜明かし 先駆 巣立 手渡 入江 飛火 教子 合わせ鏡 生物 落葉 預かり金 寒空 深情 愚者 行 伸 乗 抜 作 暮らし 売 取 乗 引 歩 申 移わり 長生 早起 苦 大写
 有 待
乳飲子 無理強 立居振 呼電話
次々 常々 近々 深々 休 行

「送り仮名の付け方 複合の語 通則6」(文化庁)https://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/sisaku/joho/joho/kijun/naikaku/okurikana/honbun06.html

この本則を読むと「複合の語を構成する単独の語の送り仮名の付け方による」という基本方針がわかります。

複合語の「送り仮名の付け方」ー 読み間違えるおそれのない場合は送り仮名を省いてよい

「送り仮名の付け方 複合の語 通則6」では[許容]ルールが示されています。それは、読み間違えるおそれのない慣用と認められる語については送り仮名を付けなくてよいというものです。具体的な語を挙げて示されていますのでご紹介します。

「送り仮名の付け方 複合の語 通則6」

許容

読み間違えるおそれのない場合は、次の( )の中に示すように、送り仮名を省くことができる。

〔例〕
抜く(書抜く) 申込む(申込む) 打せる(打ち合せる・打合せる) 向い合せる(向い合せる) 聞苦しい(聞苦しい) 待遠しい(待遠しい) 田植(田植) 封切(封切) 落書(落書) 雨上り(雨上り) 日当り(日当り) 夜明し(夜明し)
江(入江) 飛火(飛火) 合せ鏡(合せ鏡) 預り金(預り金) 抜駆け(抜駆け) 暮し向き(暮し向き) 売(売上げ・売上) 取(取扱い・取扱) 
(乗換え・乗換) 引(引換え・引換) 申(申込み・申込) 移り変り(移り変り)
難み(有難み) 待遠しさ(待遠しさ) 
居振舞い(立ち居振舞い・立ち居振舞・立居振舞) 呼電話(呼出し電話・呼出電話)

「送り仮名の付け方複合の語 通則6」(文化庁)https://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/sisaku/joho/joho/kijun/naikaku/okurikana/honbun06.html

「申し込む」OR「申込む」などの表記は迷いやすいですよね。
「送り仮名の付け方」のルールでは、どちらもOKということです。
さらに、「申し込み」と名詞になると、「申込み」だけでなく「申込」もOKとされています。

許容に幅のある語の表記方法は、自分でルールを決めておくと記事作成がしやすいですね。

複合語の「送り仮名の付け方」ー 慣用に従って送り仮名を付けない名詞の複合語

「送り仮名の付け方 複合の語 通則7」では、慣用に従って、送り仮名をつけない名詞の複合語が示されています。

送り仮名の付け方 複合の語 通則7

複合の語のうち、次のような名詞は、慣用に従って、送り仮名を付けない。

〔例〕
(1) 特定の領域の語で、慣用が固定していると認められるもの。

ア 地位・身分・役職等の名。
  関取 頭取 取締役 事務取扱

イ 工芸品の名に用いられた「織」,「染」,「塗」等。
  《博多》織 《型絵》染 《春慶》塗 《鎌倉》彫 《備前》焼

ウ その他。
  書留 気付 切手 消印 小包 振替  切符 踏切 請負 売値 買値 
  仲買 歩合 両替 割引  組合 手当 倉敷料 作付面積
  売上《高》 貸付《金》 借入《金》 繰越《金》 小売《商》
  積立《金》 取扱《所》 取扱《注意》 取次《店》 取引《所》 
  乗換《駅》 乗組《員》 引受《人》 引受《時刻》 引換《券》 
  《代金》引換 振出《人》 待合《室》 見積《書》 申込《書》

(2) 一般に、慣用が固定していると認められるもの。
  奥書 木立 子守 献立 座敷 試合 字引 場合 羽織 葉巻 番組 
  番付 日付 水引物置 物語 役割 屋敷 夕立 割合 合図 合間 
  植木 置物 織物 貸家 敷石 敷地敷物 立場 建物 並木 巻紙 
受付 受取 浮世絵 絵巻物 仕立屋

「送り仮名の付け方 複合の語 通則7」(文化庁)https://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/sisaku/joho/joho/kijun/naikaku/okurikana/honbun07.html

通則7では、最後に注意が示されています。

(注意)


(1) 「《博多》織」、「売上《高》」などのようにして掲げたものは、《 》の中を他の漢字で置き換えた場合にも、この通則を適用する。

(2) 通則7を適用する語は、例として挙げたものだけで尽くしてはいない。したがって、慣用が固定していると認められる限り、類推して同類の語にも及ぼすものである。通則7を適用してよいかどうか判断し難い場合には、通則6を適用する。

「送り仮名の付け方 複合の語 通則7」(文化庁)https://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/sisaku/joho/joho/kijun/naikaku/okurikana/honbun07.html

送り仮名は、読み間違いや読みづらさを解消するために付けるものです。
「送り仮名の付け方」が絶対ではありませんし、個人の表記や表現までを対象としているわけではありません。柔軟な統一を図るとよいでしょう。

プロ記者の「経済関係複合語」送り仮名の付け方を活用する方法

「経済関係の複合語」を使うたびに「送り仮名の付け方」を参照しながら、「これは送り仮名を省いていいんだっけ?」「これは慣用なのか?」などといちいち考えていたのでは、いくら時間があっても足りません。記事作成の効率も悪くなりますよね。送り仮名が不統一にもなりがちです。

だったらあらかじめ、「複合語の送り仮名の付け方」リストを作成して、自分のルールを決めておけばいいかもしれませんが、それも膨大な手間と時間がかかって面倒です。

ここで役立つのが、『記者ハンドブック 新聞用字用語集 第14版(共同通信社) です。

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プロ記者が使うルールを、そのまま使わせてもらえばいいわけです。

プロ記者の記事作成ルールが活用できる「新聞用字用語集」

『記者ハンドブックー新聞用字用語集』(共同通信社)とは、言葉の表記方法はもちろんのこと、記事の書き方の基本、ジャンルごとの「記事のフォーム」に至るまで記事作成の決まりごとが掲載されている、まさに記者必携の書です。

「送り仮名の付け方」についても、共同通信社における記事作成の原則が掲載されています。
統一ルールの基本は以下の2点です。

内閣告示の「送り仮名の付け方」に基づき、日本新聞協会の「新聞用語懇談会」で決まった方式に準拠

内閣告示の「送り仮名の付け方」の「本則(例外を含む)」に統一し、「許容」は採用しない

で言っていることは、この記事でいえば、セクション1- で説明した「複合語の『送り仮名の付け方』ー 読み間違えるおそれのない場合は送り仮名を省いてよい」というルールは、共同通信社の記事作成では採用しないということです。

「複合の語を構成する単独の語の送り仮名の付け方による」という基本と、「慣用に従って送り仮名を付けない名詞の複合語」という応用で、送り仮名を付けるルールです。シンプルな規定となっています。

経済関係の複合語は、新聞記事に頻繁に使われます。

内閣告示の「送り仮名の付け方」に従って、記者の一人ひとりが経済関係の複合語の送り仮名の付け方について判断していては、紙面にバラつきが生じてしまいます。

新聞記事に、表記のゆれがあるのは問題でしょう。読みづらいだけではなく、紙面の信頼性も損ねかねません。

そこで、各新聞社や報道機関では「経済関係の複合語の送り仮名の付け方」について、ルールを設けているのですね。

さて、では実際に『記者ハンドブックー新聞用字用語集』を使ってみましょう。
例えば冒頭で挙げた、「うりあげだか」の送り仮名の付け方で迷ったとき、「うりあげ」を『記者ハンドブック』で引くと、次のように示されています。

うりあげ 

売り上げ(課税、増、増加、予定) 売上《高》、売上高純利益率、売上総利益、売上高増加率、売上予定額 経済複合語

『記者ハンドブック ― 新聞用字用語集』(共同通信社)

これを見れば、「うりあげ」を単独で使用する場合には、送り仮名を付けて「売り上げ」と表記し、「売上」に「高」が付いて複合語になった場合は、「売上高」と表記すればいいんだなとわかります。

この『記者ハンドブックー新聞用字用語集』のルールに準拠すれば、

A社の売り上げが伸びて、売上高は過去最高!

こう表記するのが正解ということになります。

表記のルールがわかれば、ストレスなく記事を作成することができますね。

「うりあげ」の項には、矢印で「経済複合語の項を参照すべし」とアナウンスされています。
そこで、「経済関係複合語の送り仮名」の項目を見てみます。

『記者ハンドブックー新聞用字用語集 第14版』では、「経済関係複合語の送り仮名」を解説しています。そこには、新聞でよく使われる経済関係語が整理・網羅されています。

忙しい記者が使いやすいように、見開きでコンパクトに掲載されているので大変に実践的です。

「経済関係複合語」は「組み合わせ表」で確認できる

特筆すべきは「経済関係複合語組み合わせ表」です。この表は、次のような構成となっています。

経済関係の分野で慣用される「売上」「小売」「支払」「積立」「見積」など42語が具体的に挙げられている。

42語の後ろに付ける「人・時・所・機器・金・書・機関・制度・品目・数量」にまつわる146語が具体的に挙げられている。

経済関係の複合語の表記と送り仮名の付け方は、この表を使って42語と146語の組み合わせで考えればいいわけです。これを使えば、まさにプロ級!誰でも記者と同じ表記ができるというわけですね。

大変にわかりやすい表なので、私はいつも使っています。
この場で「経済関係複合語組み合わせ表」を実際に見ていただくのが一番わかりやすいのですが、著作権の関係からこの表をそのままご紹介することができません。恐縮ながら、もう少し言葉で説明させていただきます。お付き合いください。

経済関係の分野で慣用される「売上」「小売」「支払」「積立」「見積」など42語は、単独で使う場合は、「売り上げ」「小売り」「支払い」「積み立て」「見積もり」と送り仮名を付けます。

しかし語末に「人・時・所・機器・金・書・機関・制度・品目・数量」を表す語(146語)がついて複合語となった場合には、送り仮名を省くと示されているわけです。

このルールに従えば次このような表記となります。

売上高  ×売り上げ高
小売商  ×小売り商
支払人  ×支払い人
積立金  ×積み立て金
見積額  ×見積もり額

「経済関係複合語の送り仮名」-複合語が重なるときの付け方

「もうしこみうけつけきかん」のように、複合語が重なったときは、「申込受付期間」と送り仮名を省いて表記することがルールとして示されています。
このルールに従えば、「申し込み受付期間」も「申し込み受け付け期間」も×ということになります。

「申込受付期間」
×「申し込み受付期間」
×「申し込み受け付け期間」

経済関係42語の後ろに、146語にない語が付く複合語のとき

経済関係の分野で慣用される「売上」「小売」「支払」「積立」「見積」など42語の後ろに、「経済関係複合語組み合わせ表」で挙げられている「人・時・所・機器・金・書・機関・制度・品目・数量」を表す語(146語)以外の語が付く場合もあります。

例えば、「うけつけじゅん」「とりあつかいほうほう」「ふりこみほうほう」などです。
その場合は、複合の語を書き表す単独の漢字の送り仮名を付けます。

受け付け順   ×受付順
取り扱い方法  ×取扱方法
振り込み方法  ×振込方法

以上のほかにも、いくつか注意点が示されています。

私は、売上高、売上累計など、自分が頻繁に使う経済関係の複合語はパソコンに単語登録しています。登録しておけば、効率よく原稿作成作業を進めることができます。

ちなみに、「用字用語集」のATOK変換辞書も発売されています。
ATOKを使っているならインストールできます。
私はまだ活用していないので、実体験をご紹介できなくて申し訳ないのですが、情報だけご案内させていただきますね。

「共同通信社 記者ハンドブック辞書 for ATOK」(JUSTSYSTEMS)(https://www.justsystems.com/jp/products/dic_kyodo/

「記者ハンドブック」については、「【表記統一】「読みやすい記事」作成| 基本を極めるコツ」でも紹介しているので、よろしければこちらも参考にしてみてくださいね。

あわせて読みたい
「読みやすい文章」作成のコツ| 表記統一に役立つ『記者ハンドブック 新聞用字用語集』
「読みやすい文章」作成のコツ| 表記統一に役立つ『記者ハンドブック 新聞用字用語集』

まとめ

今回は、「【経済関係複合語】送り仮名の付け方」についてお伝えしました。

最後にもう一度、ポイントをまとめておきましょう。

4つのポイント

複合語の送り仮名の付け方の基本は、複合の語を構成する単独の語の送り仮名の付け方による

読み間違えるおそれのない慣用と認められる語については、送り仮名を省いてよい

特定の領域などで、慣用が固定している名詞の複合語には送り仮名をつけない

『記者ハンドブックー新聞用字用語集』に掲載されている「経済関係の複合語の送り仮名の付け方」を活用すると効率的に表記の統一ができる

私が30年近くにわたり、書籍の企画編集者として自学しながら活用してきた方法をお伝えしました。

複合語の送り仮名の付け方は、紛らわしいと感じることが多いですが、『記者ハンドブックー新聞用字用語集』を活用すれば解決できることが多いので、本当に助かっています。

今回の記事が、少しでも皆さまのお役に立てばうれしいです。

それでは、またお目にかかりましょう。

【資料・参考文献】

『記者ハンドブック 第14版 新聞用字用語集』(共同通信社)

『日本語表記ルールブック 第2版』(日本エディタースクール)

『Editor’s Handobook 編集者・ライターのための 必修基礎知識』(編集の学校/文章の学校[監修]、雷鳴社)

「送り仮名の付け方」(文化庁)
https://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/sisaku/joho/joho/kijun/naikaku/okurikana/index.html

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60代でブログをスタート。
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【経歴】新卒でアパレル営業職/業界新聞社勤務/出版社で書籍企画と編集/ただいまデジタル学習中。趣味はゆるマラソンと山歩き。

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